【薬学生必見】薬剤師国家試験勉強法③
こんにちは。薬剤師Tです。
前回予告した通り、各科目の勉強法をお教えします。
今回は、物理・化学・生物・衛生・薬理についてお話します。
青本ベースでの解説ですが、他の参考書の人も参考にしてみてください。
はじめに
簡単に要点をまず書きます。
まず勉強の順番ですが、私は青本の1番から順にやっていきました。
物理→化学→生物→衛生→薬理→薬剤→病態・薬物治療→法規・制度・倫理→実務
この順番ですね。
ただ、薬理は基本的に他の科目と同時並行でやってました。
(これは1周目の時の順番です。2周目以降はバラバラの順で勉強しました。)
まずは、実務以外の青本を1周終わらせるのを目標に勉強してください。
8月ごろから初めて、10月ごろまでに1周目が終わっていたら好ペースだと思います。
12月に入っても1周目が終わってない人は焦って死ぬ気で勉強しましょう。
(受かる人は12月には2周、科目によっては3~4周くらいできています。)
勉強の順に指定はないのですが、理解に時間のかかる物理・化学・生物は早めから始めましょう。
いわゆる暗記科目のうち、衛生や薬剤の製剤分野、法規・制度・倫理は直前期(1~2か月)の詰め込みで点数を上げることができます。
薬理、病態・薬物治療も詰め込みで点数は上がるのですが、覚える量が膨大ですので日ごろから何度も問題演習を繰り返す必要があると思います。
実務に関しては私はそこまで勉強していません。これはまた後日お話しするのですが、実務は他の科目ができていれば解けることが多いです。
では、今回解説する科目について軽く触れていきます。
物理・化学・生物は広く浅く、勉強はできるだけ早く始めましょう。
衛生は、得意科目にしやすい科目です。基本暗記になるので、物理・化学・生物より勉強のスタートは遅くていいと思います。
薬理は、薬学生として落とせない科目です。つまり、薬理は点稼ぎ科目です。そして、薬理をある程度理解すると模試の点数は格段に伸びます。
では、科目ごとに詳しく見ていきましょう。
物理
物理です。私は、物理・化学・生物の中で一番得意でした。
物理の目標は、必須問題を落とさないようにすることです。
物理の内容を大きく分類すると
①物質の構造について
②エネルギーについて
③反応速度について
④分析法について
に分類できると思います。
一つずつ解説していきます。
①物質の構造について
この範囲は、暗記が中心になります。そのため、比較的簡単であり内容はしっかりと理解する必要があると思います。
計算は少ないですが吸光度の計算が出やすいですので、しっかりと計算できるようにしておきましょう。
苦手な分野になりやすいのは、放射線の部分かと思います。
どの放出核種からどの放射線が出るかや、放射壊変についてが難しい部分です。
まずは、理解から始めるのが良いです。
β-線とはどのようなものか、α壊変とはどのようなものか等を説明できるようにしましょう。
具体的な、「3Hはβ-線を放出する。」などは後から覚えてしまいましょう。語呂合わせなどを用いて覚えるのがいいと思います。
②エネルギーについて
ここは、計算が多く理解しなければならないことが多い部分です。
逆に言えば、一度理解さえしてしまえば勝ったも同然です。
この分野はよく出題されますので、しっかり勉強しましょう。
出やすい部分ですが、全体的に出やすいです。
活量についてはやや出にくいかなという印象はあります。
大切な分野ですので、物理が苦手な人でも、ここは頑張って勉強してほしい分野です。
③反応速度について
ここも計算が多く出題されます。
そして、この分野もよく出題されますので、しっかり勉強しましょう。
0~2次反応の速度式を実際に積分し、時間と濃度の関係式や半減期を自分で導出できるようにしておくことが大切だと思います。
暗記してしまうのはあまりお勧めできません。
④分析法について
まず、定性分析と定量分析については、私は半分くらい捨てていました。
ここを暗記するのはかなりコスパが悪いように感じます。
まず、無機イオン定性分析はすべて捨てました。
医薬品の定性分析では、アミノ基の定性、ニンヒドリン試液を用いるもの、銀鏡反応、フェーリング反応あたりを覚えました。
定量分析は、基本的な原理は一通り理解しました。
標準薬や指示薬はほとんど覚えていなかったです。
青本にもいろいろな医薬品の反応モル比などが載っていますが、覚えなくていいと思います。余裕がある人は覚えましょう。
機器を用いる分析法は覚えておきましょう。
それぞれの分析法がどのような原理で分析をしているのかは、しっかりと理解しておく必要があります。
「蛍光光度法の光源には何を使う?」のような問題は王道の問題ですので、答えられるように。
また、スペクトルの解析もよく出る問題です。IRスペクトル、プロトンNMRスペクトル、マススペクトルあたりは、見てわかるようにしておきましょう。
その他にも、クロマトグラフィーや電気泳動、画像診断などは出やすい分野ですのでしっかりと勉強しましょう。
化学
化学です。私は、物理・化学・生物の中で二番目に得意でした。
化学の目標は、必須問題を落とさないようにすることです。
化学の内容を大きく分類すると
①化学の基本事項について
②化学反応について
③無機化学について
④医薬品のパーツについて
⑤生薬について
に分類できると思います。
一つずつ解説していきます。
①化学の基本事項について
ここは必ず理解しておきたいところです。
必須問題でも、命名法や立体配置、酸塩基の強弱、共鳴構造はよく出てくるところです。
化学が苦手な人もここはしっかりと押さえておく必要があります。
ここが理解できないと、この先の化学反応もできなくなってしまいます。
②化学反応について
化学が苦手な人はギブアップしてしまう分野です。
基本的には全範囲満遍なくやる必要があります。
アルコール・フェノール・エーテルの反応、アミンの反応はやや出にくい部分かなと思います。
まずは、SN1、SN2反応、E1、E2反応をしっかりと理解してから先に進むといいと思います。おそらくここが一番理解しやすいところです。
基本的に全部やる必要があるのですが、特に重要な部分は「アルケンのanti付加、syn付加」、「マルコフニコフ則」、「置換基による配向性」、「カルボン酸誘導体の反応性」あたりだと思います。(全然書き足りないですが…)
③無機化学について
この範囲はすべて捨てました。
まったく勉強していないです。
しかし、他の分野でも出てきますので、錯体については知っておきましょう。
ビタミンB12やEDTAは衛生で錯体やキレート試薬として登場します。
物理でもEDTAは出てきました。
その他にも金属含有医薬品はしばしば試験に出ます。
Al含有のスクラルファートが透析患者に禁忌などは有名な話かと思います。
このあたりは、薬理で学ぶことができますね。
④医薬品のパーツについて
ここで重要なのは「共有結合を介する医薬品」と「プロドラッグの仕組み」、「医薬品の骨格」です。
この3つを押さえておけば大丈夫だと思います。
共有結合を介する医薬品は、アスピリン、ペニシリン、フルオロウラシル、オメプラゾール、シクロホスファミド、マイトマイシンCあたりですかね。
プロドラッグの仕組みについては、「なぜプロドラッグにしているのか?」や「どのような製剤の工夫をしたものなのか?」を理解しましょう。
医薬品の骨格は、「ベンゾジアゼピン系の薬はどれ?」等と聞かれて答えられるようにしておく必要があります。
⑤生薬について
この範囲はほぼ捨てました。
ほとんど勉強していないです。
やはり、暗記量に点数が見合わない分野だと思います。
しかし、暗記が得意な人は「覚えれば確実に点が取れる分野」ですので、やる価値はあるんじゃないかと思います。
すべて捨てるのが不安な人は、シキミ酸経路などの二次代謝経路を中心に勉強するのがいいと思います。
基本的には、骨格を見てどの経路から生成されているものなのかを選ぶという問題が主流です。
まれに、経路の出発点の物質が問われたりもします。
例えば、酢酸マロン酸経路の場合、「アセトアセチルCoA+6分子のマロニルCoA」みたいな感じです。
その他にも、アルカロイドに関してはどのアミノ酸が由来であるかを判断する必要があります。
トロパン骨格を含有するならオルニチン、ベンゼン環の隣にNがあるならトリプトファン、ベンゼン環から離れた位置にNがあるならチロシン由来といった感じです。
生物
生物です。私は、物理・化学・生物の中で一番苦手でした。
というか、全科目の中で一番苦手でした。
生物の目標は、必須問題を落とさないようにすることです。
そして、今までの分野と違い生物は捨てれる部分がほとんどないです。
まずは、全体的に広く浅くやっていきましょう。
生物の内容を大きく分類すると
①細胞について
②栄養素について
③代謝について
④遺伝について
⑤人体の成り立ちについて
⑥免疫について
⑦微生物について
に分類できると思います。
一つずつ解説していきます。
①細胞について
全体的に重要ですが、特に重要なのは「細胞小器官」、「接着構造」、「細胞周期」あたりでしょうか。
生物は基本全て暗記になるので、覚えるまで立ち止まるのではなく、忘れてもいいから次に進み、周回を重ねて繰り返し何度も見返すというのが重要だと思います。
②栄養素について
脂質、糖質、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、たんぱく質について学びます。
まずは、それぞれどのような物質であるかを構造式とともに覚えましょう。
特に糖質、アミノ酸、ビタミンの構造は重要になってきますので、必ず覚えましょう。
ビタミンはその役割も聞かれることが多いです。これは、生物ではなく衛生で出題されることもあります。
③代謝について
ここが1つ目の山だと思います。
そして、国試でもよく出題される部分です。
まず、それぞれの経路を覚える必要があります。
解糖系や尿素回路、β酸化やコレステロールの生合成等、どのような物質が関わってくるかが重要です。
特に、反応して出来上がる物質や、不可逆的な反応、ATPが関わってくる反応は重要になってきます。
ほとんどの部分が出題されやすいですが、ケトン体の利用やペントースリン酸回路は出にくいイメージがあります。
④遺伝について
ここが二つ目の山になると思います。
最近、遺伝子工学がかなり熱い分野ですので、出題の割合も多くなるのではないかと思います。
まず、核酸塩基の構造は覚えましょう。
アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、この5種類です。
そして、それぞれの生合成と分解のされ方を覚えましょう。
ピリミジン塩基とプリン塩基によって方法が異なってきます。
その後は、セントラルドグマについて理解していくことになると思います。
複製に必要な酵素の名前や、DNAの複製や転写、翻訳の流れなどは必ず覚えておきましょう。
文字だけでは覚えにくいと思いますので、イラストを利用してイメージで覚えたほうがいいと思います。
前述しましたが、遺伝子工学がかなり熱い分野ですので、ここの対策はしておくことをお勧めします。
⑤人体の成り立ちについて
いわゆる機能形態学にあたる部分です。
ここは、まさに広く浅く覚えてください。
他の科目との兼ね合いを考えるなら、薬理などで役に立ちやすい内分泌系の分野から勉強するのがいいと思います。
⑥免疫について
ここが第3の山です。
まずは、免疫にかかわる細胞を覚えましょう。
それぞれがどのような働きをするのかが重要です。
その後、細胞性免疫や体液性免疫へのそれぞれの細胞のかかわりや、補体の活性化、T細胞による抗原の認識など細かい部分を覚えていきましょう。
また、抗体の種類と特徴や、インターロイキンの種類と特徴などは必須問題で出てきてもおかしくはないので、しっかりと覚えましょう。
⑦微生物について
ここが最後の山です。
微生物を覚えるときは分類ごとに分けて覚えるのがいいでしょう。
グラム陰性菌か陽性菌か、球菌か桿菌か、嫌気性か好気性か、芽胞は形成するかしないか等、分類の仕方は様々ありますので、自身でいろいろ比較してみるのがいいと思います。
当たり前のことですが、少数派の仲間はずれが試験では出題されやすいです。そのことを頭に入れて勉強すればいいと思います。
また、この分野は衛生とのつながりも強いですのでしっかりと勉強しましょう。
衛生
衛生です。
衛生の目標は、理論問題にも対応できることです。
得意科目がないという人は、衛生を得意科目にするのが比較的簡単だと思います。
ですので、ぜひしっかりと勉強し、得意な科目にしてみてください。
衛生の内容を大きく分類すると
①保健統計・疫学について
②疫病について
③栄養について
④物質の生体への影響について
⑤生活環境について
に分類できると思います。
一つずつ解説していきます。
①保健統計・疫学について
個人的には比較的簡単な分野だと思います。
暗記する部分もありますが、計算が出題されることもあります。
計算は、「年少人口指数」、「純再生産率」等、他のものと混同してしまうものは要注意です。
また、オッズ比の計算などは確実にできるようにしておいてください。
②疫病について
ここでは感染症と生活習慣病、母子保健や業務上疾病について学びます。
感染症がかなりのウエイトを占めているので、それについて解説します。
感染症に関しては、感染症法における分類をもとに覚えていくのがいいと思います。
1~3類感染症はすべて言えるようにしておいてください。
重要な感染症に関しては、特徴や感染経路も覚えておきましょう。
また、それぞれの感染症に対する対策についても覚えておく必要があります。
就業制限等の措置を受けるのはどの感染症か言えるようにしましょう。
さらに、母子の垂直感染に関する問題もよく出題されます。感染経路も含めしっかりと覚えておきましょう。(ここは母子保健にも関わってくる分野です。)
ワクチンについても出題されやすいです。
特に、生ワクチンであるものを問う問題や、予防接種の注意点は必須問題や実践問題で出る可能性があります。
コロナワクチンが騒がれている時代ですので、ワクチンに対する関心は高まっているのではないでしょうか。
生活習慣病、母子保健や業務上疾病も重要な部分ですのでしっかりと学んでおきましょう。
③栄養について
衛生の分野で出やすい栄養は、ビタミンとミネラルです。
この二つはしっかりと勉強しましょう。
また、Atwater係数を用いた計算や、呼吸商の計算はしっかりと押さえておきましょう。
少し出題の可能性は少ないですが生物価の計算なども出るかもしれません。
この分野では食品衛生についても学びますので、それも少し解説します。
食品衛生では、発がん物質の部分が難しい範囲となります。
どうしてもわからない場合は、この発がん性の部分は捨ててもいいかと思います。
重要なのは、「油脂の変敗」、「食品添加物」、「特別用途食品」、「食中毒」です。
この範囲についてはしっかりと勉強しましょう。
食品添加物は、構造式を見てその使用用途が答えられるようにしておく必要があります。
食中毒は、生物の微生物をしっかりと勉強していると少し楽ができます。
④物質の生体への影響について
重要なのは、「重金属」、「PCB」、「農薬」、「解毒剤」、「乱用薬物」、「化審法、化管法」あたりでしょうか。
特に農薬はよく出る範囲です。
農薬の作用機序や解毒薬はもちろん、構造式を見て解毒薬を選択するような問題も出ます。
乱用薬物に関しては、精神依存と身体依存の有無や、尿中未変化体の有無も重要になります。もちろん、構造式も重要です。
また、摂取方法も知っておくと実践問題で役に立つことがあります。
⑤生活環境について
ここはとてもよく出る範囲ですので、全範囲満遍なくやる必要があります。
特に、「水環境」、「大気環境」、「室内環境」は重要です。
水環境では、塩素要求量や水質基準が特に大切です。
また、下水処理の方法や、BODなどもよく出題されます。
大気環境は、大気汚染物質の特徴とその測定法をしっかり覚える必要があると思います。
室内環境は、気動の算出やシックハウス症候群についてが大切です。
薬理
ここは薬学生ならば必ず取らなければならない教科です。点稼ぎ科目です。
薬理が得意科目という方は少し損です。なぜなら、薬理が苦手な人もある程度高いレベルに仕上げてくるため、差がつきにくいからです。
そのため、薬理しか得意科目がない人はもう1科目得意なものを作りましょう。
薬理は暗記科目ですが、ある程度の理解も必要になってきます。
「アセタゾラミドを使うとどうなるか?」という問いに「近位尿細管で炭酸脱水酵素を阻害するので排尿を促します。」と言うだけでは少し物足りません。
この作用の裏で、他に何が起こっているかを考えなければなりません。
有名なのは低K血症ですよね。
他にも、代謝性アシドーシスも起こりえます。
これらはなぜ起こるかわかりますか?
おそらく、暗記だけで乗り切っている人にはわからないと思います。
これらの副作用も全て暗記できるのならそれでもいいのですが、そういう人はあまりいないでしょう。
これらは体内で起こっているイオンの移動を見ていけば暗記せずともわかるようになります。(青本に機序は載っていますので、探してみてください。)
覚えるだけではなく、理解するという観点で薬理を勉強していかなければ、おそらくかなりキツイことになると思います。
また、常になぜそれが起こるのかを考える癖をつけるようにすると、単純な暗記だけで終わらず知識がより定着すると思います。
おわりに
長々と書きましたが、一番重要なことをお伝えします。
それは自分にあった勉強法を9月の時点までに決めておくということです。
どのようにしたら暗記がしやすいか等は8月中(できれば早い時期)に探っておいてください。
9月の時点で自分に合った勉強方法がわからない人は、勉強方法を探すのはあきらめてとりあえず参考書を前へ前へと進めたほうが得策です。
勉強法を探って時間を使うよりも知識を一つ身に着けたほうがいいです。
そして、勉強を始めたらコンスタントに続けることが重要です。
勉強する日としない日をはっきりと決め、例外は作らないようにするのが望ましいです。
特に理由もなく勉強する日にサボってしまうと、それは以降も続いていきますのでご注意ください。(経験済み)
では、皆さんの国家試験合格を心よりお祈りいたします。