薬剤師Tのあれこれブログ

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【大学受験生向け】薬学部の選び方

こんにちは。薬剤師Tです。

今回は、薬学部を目指している方に向けて、薬学部の選び方を考えていきたいと思います。

 

 

 

はじめに

簡単にですが、決め手となるポイントは

①偏差値

②学費

③立地

④薬剤師国家試験合格率

この4つかなと思います。

では、さっそく見ていきましょう。

 

 

偏差値

薬学部といえば、「偏差値が高め」、「医学部受験生が滑り止めで受ける」みたいなイメージが多いかなと思います。

 

概ね、このイメージは正解だと思います。

私の友人にも医学部落ちをして薬学部に来ていた人もいますし、中には仮面浪人をして医学部に合格している人もいました。

偏差値も国公立薬学部では60以上は必要になる場合が多いです。

そのため、しっかりと受験勉強に取り組まなければなりません。

 

しかし、それに対して私立薬学部は半数以上の大学が偏差値50を下回っています

つまり、私立薬学部なら受験勉強したくない人や、諸々の理由で勉強が困難だった人でも入ることは可能です。

 

したがって言い換えるなら、「偏差値の高い薬学部≒国公立の薬学部」となります。

もちろん、慶応義塾大学や東京理科大学等の例外はありますが…

 

では、どのような人が「偏差値の高い薬学部≒国公立の薬学部」に行くべきなのか。

偏差値の高い薬学部に入るべき人は2種類いると思います。

①生活困難等の理由で学費が支払えない人。

②将来、研究職、MR(医薬情報担当者)につきたいと思っている人。

 

①生活困難等の理由で学費が支払えない人。

これは、わかりやすいと思います。

私立の薬学部となると、学費は総額1000万円以上になります。

それに対し、国公立の薬学部はおよそ400万円程度です。

そのため、金銭的な余裕がない人は国公立を目指すのが現実的だと思います。

 

しかし、奨学金制度や大学の成績優秀者の制度を使えば、私立薬学部でも学費を減らすことができますので、どうしても薬学部に行きたい人は活用してみましょう。

奨学金は、いわゆる借金なので将来的に返す必要があります。)

 

 

②将来、研究職、MR(医薬情報担当者)につきたいと思っている人。

これは、あまり想像がつかないかもしれませんが、研究職、MRを目指したい方は偏差値の高い薬学部を目指しましょう。

なぜ、研究職やMRが私立薬学部から出にくいのか理由を考えてみましょう。

 

研究職

その名の通り、製薬メーカーに勤め、研究に従事する仕事です。

なぜこの職業が私立薬学部から生まれにくいかというと、私立薬学部は研究よりも薬剤師国家試験合格に重点を置いているからです。

そのため、卒業研究はそこそこにして、あとは国家試験のための勉強というところも多いようです。

また、私立薬学部は偏差値が低いところが多く、入学時点で化学の基礎もあまりわかっていない人が多いです。そのため、国公立の学生についていけないという現状もあります。

まとめると、国公立と私立の薬学部では研究や学生の知識のクオリティに差があり、それ故、国公立薬学部は研究職になりやすいといえます。

 

MR(医薬情報担当者)

MRは少し聞きなじみのない職業かもしれません。MRとは医療機関に医薬品情報の提供・収集をおこなう職業を指します。いわゆる営業職ですね。

なぜこの職業が私立薬学部から生まれにくいかというと、この職業は薬学部以外の人もなることができるためです。

特に、MRは年収700万円~1000万円程度稼げる職業ですので、それ相応の人気があります。また、製薬企業に勤めるということは、言い換えれば一流企業に勤めることになりますので、競争率が高く就活では偏差値によるフィルターがかかりやすいです。

 

逆にこれらの条件に当てはまらないのであれば、私立の薬学部でもほとんど問題ないです。

ドラッグストアや調剤薬局、病院や公務員として働く場合、大学の偏差値が採用、不採用に関係することはまずないです。

 

参考までに

国公立薬学部の偏差値

www.minkou.jp

私立薬学部の偏差値

www.minkou.jp

 

 

学費

偏差値の項目にも書きましたが、学費は圧倒的に国公立薬学部のほうが安いですので、学費で選ぶのであれば、国公立薬学部一択です。

私立の薬学部となると、学費は総額1000万円以上になります。

それに対し、国公立の薬学部はおよそ400万円程度です。

 

しかし、上記したように私立薬学部にも学費を安くする方法があります。

それは成績優秀者になることです。

私立の名城大学についてみてみましょう。

 

入試成績優秀奨学生

一般入学試験(A方式)において、各学部成績上位の合格者(対象者約400名)の内、入学した者

給付額は、授業料年額の1/2(入学年度のみ対象)です。

 

学業優秀奨学生

新4年次生で、3年次までの学業成績および人物優秀者
成績基準:次の(1)および(2)に該当する者
(1)3年次までに93単位以上を、修得している者で、卒業見込みの者(薬学科を除く)
(2)履修登録科目の平均点が80点以上の者

これらを満たす人の中から、2名が対象です。

給付額は、授業料年額の1/2です。

 

このように、成績が優秀であると給付金がもらえるようです。

しかし、対象者が2名であったりと狭き門であることは間違いないので、大学では勉強中心の生活をしなければならないと思います。

 

つまるところ、学費を安くしたいのであれば、大学受験で必死に勉強するか、大学に入ってから必死に勉強するかの二択になると思います。

そういう点では、入ってから成績をあまり考えなくてもいい国公立大学に合格するのが一番だと思います。

 

 

立地

これは自宅からの近さや、駅に近いかなどで選ぶ考え方です。

ただ漠然と薬学部に行きたいと思っている人は、この選び方も1つの方法だと思います。

まずは、自分の家から通えるところにある薬学部を探してみましょう。

特に私立の薬学部は多く設立されていますので、自宅から通いやすい大学が見つかるかもしれません。

 

 

薬剤師国家試験合格率

これは、薬剤師免許を取るのに必要な国家試験の合格率を基準に選ぶ考え方です。

薬学部を出た以上、やはり薬剤師の免許は欲しいところです。

そのため、将来薬剤師の免許を使って活躍したいという人は合格率を基準に選ぶのがいいと思います。

 

以下に薬剤師国家試験(106回)の合格率TOP10を書いておきます。

黒字は私立大学、赤字国公立大学です。

1位「医療創生大学」95.92%
2位「金沢大学」94.74%
3位「名城大学」92.68%
4位「星薬科大学」88.85%
5位「北里大学」88.26%
6位「京都薬科大学」88.09%
7位静岡県立大学」86.96%
8位広島大学」86.84%
9位北海道大学」86.11%
10位「昭和大学」86.1%

 

参考までに

medical.nikkeibp.co.jp

 

こうしてみると、国家試験はやや私立大学のほうが強いようにみえます。

薬剤師国家試験の合格率はおよそ70%ですので、上位10大学がいかにすごいかがわかりますね。

 

しかし、すべての私立大学が合格率がいいというわけではないです。

大学別合格率は、

国立81.3%

公立83.64%

私立67.75%

となっています。

 

また、合格率が最下位であったのは私立大学第一薬科大学であり、その合格率は31.46%でした。

ちなみに国公立の最下位は京都大学73.68%でした。(和歌山県立医科大学山陽小野田市立山口東京理科大学は合格率が分からなかったので除外しています。)

 

また、私立の薬学部のうち合格率が高いところは進級や卒業試験でふるいにかけ、合格できるであろう生徒にしか国家試験を受けさせず、残りの生徒は留年にするようなところもあるようです。

 

例えば、合格率第1位の医療創生大学の薬学部の1学年定員は90名ですが、今回の薬剤師国家試験の新卒出願数はわずか56名で、実際受験したのはわずか43名しかいないようです。

つまり半分ほどの生徒は何らかの理由で国家試験を受けてすらいないことになります。

 

このような実態もあるため、私立の薬学部に進む方は覚悟をしておいたほうがいいと思います。

逆に考えれば、嫌でも勉強をしなければならない環境に身を置けるわけですから、卒業試験に向けて必死に勉強し合格すれば、薬剤師国家試験はかなりの確率で合格できるということです。

 

何が言いたいかというと、楽して偏差値の低い大学に入ったとしても、その先に待ち受けているのは勉強しかないということです。

また、合格率が一番低い大学でも3人に1人くらいは受かっているわけですから、結局は大学でいかに勉強するかが薬剤師国家試験合格のカギになってきます。

そして、そのような勉強がしやすい環境が整っているのが、合格率の高い大学だと思います。(一部の大学はスパルタ教育かもしれませんが…)

 

 

まとめ

結論としては、基本的に家から近い国公立の薬学部に通うことをお勧めします

近くにない人は一人暮らしなどをしてみるのもいいかもしれません。

学費の観点や将来の進路の広さ、薬剤師国家試験の合格率、どれを取ってみてもやはり国公立大学のほうが魅力があります。

 

もちろん、私立薬学部がダメだというわけではありません。例えば、名城大学は国家試験の合格率も高いですし、愛知県付近での就職に関してはかなり強いと聞きます。

しかし、まずは国公立を目指して勉強をし、ダメだった時のセカンドプランとして私立の薬学部のうち国家試験合格率の高い大学を目指すのがいいと思います。

そして、それでもダメだった時の最終手段として国家試験合格率の低い私立大学を選ぶようにしましょう。

 

 

さいごに

長々と書きましたが、結局は大学に入ってからどれだけ頑張れるかが一番重要です。

京都大学に頑張って合格しても、大学生活で遊んでばかりいると不合格の約30%の中に入ってしまいます。(京都大学の場合、研究職に進むから薬剤師の免許いらないみたいな人は一定数いると思いますし、それ故に合格率が下がっているのだと思いますが…)

 

そして何より伝えたいのは、薬学部での6年間は勉強三昧です。本当に高校生活の延長みたいな生活が待っています。(いわゆる、夢のキャンパスライフみたいなものはほとんどないです。)

しかし、その中でも時には遊び、時にはアルバイトで働き、お酒を飲んだり、たばこを吸ったりと、高校生までではできなかったこともたくさんできます。

 

ですから、あまり怖がらず、薬学というものに興味がありましたら、ぜひ薬学部を目指してください。

大丈夫です、大学生活の忙しさにはそのうち慣れます。

そして卒業するころには思います。「6年間短かったなぁ」と。

 

それでは、皆さんの大学受験がうまくいきますよう、心からお祈りしています。